2013年5月17日金曜日

マネーロンダリングとマカオのカジノ、そして中国人VIP

Week in China にマカオのカジノに関する記事「The house is still winning」がありました。

習 近平体制になって、マカオのカジノも、マネーロンダリングの温床になっているとして摘発間近か、という記事が出ていたのですが・・・。
以下、簡略です。


古い中国の諺に「博打と泥棒は隣人」という警句があります。
しかし、Yang Kun の場合は、博打と銀行が、非常に密接な関係にあることを疑わせるものです。

Yangは、中国農業銀行の、元副社長。彼は、不適切な融資をしていたという疑惑で、昨年4月に拘留されました。融資額は3億元で、マカオのカジノでの債務返済のために使われたと思われています。

銀行幹部の多くは、2006年の中国建設銀行社長のZhang Enzhaoの逮捕時に、同時に逮捕されています。
が、Yangは、習近平の汚職撲滅キャンペーンの最大の獲物の一人です。
マカオのカジノが知りたいのは、Yangの事件が、Yangだけのものなのか、それともVIPをターゲットにした逮捕劇の始まりなのか、なのです。

習近平のキャンペーン以来、マカオのギャンブルは鈍化しているのか?

マカオのカジノは、米ネバダ州の昨年の売上高を、今年4月末までで超えてしまっています。
第1四半期において、売上高は、前年同期比14.8%上昇しました。
昨年の賭博収入は380億ドルに達し、ラスベガスの6倍以上の規模に成長しています。

4月の売上高は、確かに対前月比でわずかに減少しましたが、3月の売上高が39.2億ドルという、記録を更新するほどの金額に達したためです。

ほとんどのアナリストが、2013年の売上高は対前年比15%を予測しています。
ホテルの稼働率は95%平均で推移し、テーブルでの平均最低掛け金は600香港ドルに達しており、1年で倍増しています。

だからVIPの取り締まりが行われていないの?

薄熙来とその仲間によってマネーロンダリングが行われており、マカオのジャンケットの複数のボスを含む、薄熙来とその周辺が逮捕されるのではないか、という疑惑が報じられて以来、VIP取締りの噂が出回っています。
この疑惑は、Yangに対する訴追にもリンクされるかも知れません。

しかし、12か月前、習近平新体制の発表前から、投資家のムードはマカオのカジノに対して慎重なものに変化していました。

その後、昨年11月に、習近平が、廃棄物や公害対策、官僚の汚職撲滅などに注力すると発表しましたが、マカオは、具体的には言及されませんでした。しかし匿名の情報源からの2月の情報によると、実はマカオの取り締まりも言及される予定だったようです。
このニュースは、マカオのカジノ株を即時下落させました。

ターゲットVIPは誰なのか?

HSBCによると、最大で30万人が、マカオのVIPギャンブラーということです。彼らは、マカオに行くたびに、1万ドルから2000万ドルを費やしており、今年の売上高の65%が彼らの貢献によるものです。

昨年マカオにやってきた2800万人のうち、少ない割合であるにもかかわらず、昨年VIPギャンブラーは、260億ドル以上をつぎ込んでいるのです。
そして、VIPのほとんどが中国からやってきているのです。

ギャンブラーは、マカオのジャンケットの保証で掛け金を借り、中国に戻ってから6週間以内、エージェントに返済するという仕組みです。

中国人は、出国時に2万元しか持ち出せず、外貨に換えることができるのは毎年5万ドルまで、と規制されているため、この種の財政支援が不可欠なのです。

北京政府はマカオでギャンブルしにくくしたいのか

中国当局は、これらのギャンブラーの多くは不正に得た現金で遊んでいることを痛感しています。
しかし、マカオは独自の法律だけでなく、自由兌換通貨を持っています。
北京政府は、国境を越えて、深く踏みこむことに消極的なのです。

Jorge Godinho、マカオ大学教授がAmerican Lawyer magazineに語ったところによると、「あなたがネバダ州でカジノを経営し、ほとんどの客がカリフォルニア州からやってきていると想像してみてください。そして、そこに国境があり、自由に移動できない人々と、自由に移動できないお金があるものと想像してみてください。あなたは、合法的にカリフォルニアで借金を集めることができないのです。これは、非常に奇妙な法的状況なのです。」

「中国政府が浪費されている資産に、これ以上関心を持たれるのは心配です」とカジノ経営者は語ります。「政府にとって、ギャンブルに使われるだけでなく、企業や工場に消費されるお金なのです。」

最近マカオの中国代表となった李康は、中国共産党、中央委員会の規律検査メンバーであり、メンバー間の汚職を根絶するという使命を帯びています。
彼の送致は、中国の資本規制をかわしてマカオに資金を送っている個人の富裕層のマネーロンダリングをターゲットにしているものと考えられます。

ジャンケットエージェントがプレイするギャンブラーにお金を進めるかもしれないのと同じように、こっそり国外でお金を得たい政府関係者やビジネスマンは、国内のエージェントに現金を渡し、それがマカオでのチップにアクセスすることができるのです。
それから、彼らは、一晩か二晩、バカラで遊び、手元のチップは外国通貨で現金化するか、オフショアに資金を転送します。

中国の将来について神経質になっている人々にとって、マカオのカジノは、資本逃避にもっとも便利な装置のひとつなのです。
毎年2020億ドルが、違法にマカオを通して送金されていると言われています。

VIP遊びは減っているのか

実際には、VIPの売上高は、3月までの第1四半期は毎年25%で急上昇しています。

マスマーケット(ここでは普通のギャンブラー)の売上は、第1四半期の約1/3まで上昇してきており、34.4億ドル、32.2%を占めています。2012年は29.1%、2011年は27.3%なので、年々増えています。

VIPギャンブラーは予見可能な将来の売上の大半を寄付しているにも関わらず、マカオの政治的ボスは、より多様なゲーム業界になることを計画しています。
実際、カジノのボスはパーセンテージが下がったとしても気にしないでしょう。
100香港ドルごとに2.85香港ドルが、ジャンケットに手数料として流れます。
マスマーケットの売上は少ないにも関わらず、償却前利益の半分以上が、マスマーケットによるものなのです。

マスマーケットギャンブラーの需要は、経済成長の変動(と政治的なムード)とはさほど関係がありません。
中国人の大半はマカオに行ったことがありません。このことは、巨大な未開発の群衆がまだまだ存在することを示唆しています。

一部のアナリストは、将来的には、VIPの売上は小さくなり、VIPの売上に頼るカジノはなくなるだろうとみています。

とはいえ、はじめから、少なくとも75ドルを賭けるような顧客と比較すれば、マスマーケットはほとんど雑魚のようなものです。
カジノのボスは、「プレミアムマス」ビジネスの成長、すなわち258ドルから390ドルの間で最小の賭けをする顧客、に特に興奮しているように見えます。
これらのプレイヤーは、非公式の融資を必要としており、彼らは、デビットカードやクレジットカードで高価な品物を購入して質入れすることに頼っています。「商品を売ってくれれば、すぐに香港ドルかマカオパタカをキャッシュで渡すよ」と、質屋の店員はブルームバーグに語っています。質屋は10%の手数料を取って、現金に変えるのです。

VIPシェアが低下する意味とは?

問題は、VIPの売上が、いまだにかなり強いという点にあります。

そして、マカオは中国の隣にあり、中国人VIPへのチャネルがかなり以前から確立していて、中国人にしてみれば、マカオでギャンブルできるのは簡単なことである点です。

そして、マカオは、プレイヤーに保証をつけることができ、その保証に関する情報を収集する能力を持っているのです。

マカオ以外には、中国人のVIPを引き付けることはできません。実際、通貨の兌換性において、マカオは、まったく異なる政策となる可能性があります。

国務院は、人民元の完全兌換性の運用計画を発表し、2013年末までに、個人による国外投資のための包括的なチャネルを導入することを約束しました。
もし中国人富裕層が、自らの資産をオフショアに移動できるようになれば、マカオは、重要顧客を失うようになるかもしれません。




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