2012年8月27日月曜日

日本をめぐる領土問題に関する、国際関係学者の考察

香港中文大学在籍の国際関係学者、Stephen Nagy氏による、専門的な立場からの意見を掲載したいと思います。
つたない翻訳ですので、概要をご理解いただく一助となれば幸いです。


領土問題は複雑であり、新聞報道はうわべだけの話を書いています。
領土問題には、少なくとも5つのテーマがかかわっています。

1.国の結束
2.資源問題
3.外交政策
4.独立性
5.国際法

まず、中国は、日本に対して正当な主張をすると失うものがたくさんあります。
第一に、西側勢力によって形成された第2次大戦後の秩序が強まるためです。
我々が知る世界は、西側が作り出したものであり、我々はこれからもそこで生きていくということはが重要です。
中国はこの世界に遅れてやってきたため不利な立場にあります。それは、今日存在する公的機関や法制度の構築に参加していないからです。
中国人は、西側からみた世界観や、西側に好意的な法律・機関であるとして、アンフェアだと信じています。
彼らが領土に対する要求を失うことは、中国が、台湾やチベット、その他地域での領有権を失うことを意味します。これは中国の分裂につながる可能性があります。

彼らが領土に対する要求を失えば、彼らの南シナ海と周辺資源に対する主張も弱まります。

これらのケースにおいて、中国は、1200年前の最も影響力のあった時代と同様にみなしています。この文明ベースの領土視点は、現在の国家視点の領土とは大きく異なっています。実際に紛争状態にあります。すべての現国際法と公的機関は、国家視点による理解をベースにしています。中国は、自らが都合の良い時には、それらを利用します。

中国メインランドにおけるもう一つの問題は、中国共産党の政治的な正当性にあります。
共産党は、アンチ日本、被害者シンドローム(150年に及ぶ西側から受けた屈辱)をそのルールとしています。もし日本が、これらの島々において操作する余地を与えられたら、中国共産党はとんでもないことになるだろう。

中国人は、日本は過去も現在も軍国主義であり、第2次大戦について謝罪しない帝国主義の国であると考えるように洗脳されています。もちろんこれは間違っていますが、中国人が信じていることなのです。日本人と交渉することは、中国人がかつての支配者と一緒に働くことを意味します。これは多くの中国人にとって受け入れがたいことでしょう。

要するに、中国にとって島周辺の資源だけでなく、他の問題も国の存続に関係しているのです。

台湾に対して、彼らは台湾人として(中国人としてではなく)領土を主張しています。このことにより、中国の一地方というよりむしろ実際の国家として行動しようとしています。これは、中国とは異なる、独立した国家主権の明白な努力の一形態としての2国間領土紛争の承認を持っている彼らの利益になります。彼らの最後の望みは、中国がこれらの領土を手にすることは、台湾を支配することに一歩近づくことを意味するでしょう。

韓国がこの問題に関心を持っているのは、日本が尖閣諸島を正常に支配し、ガバナンスを発揮すると、彼らの竹島への要求が弱まる可能性があるからです。もし韓国が、領土紛争に関する国際仲裁のための日本の要求を受け入れると、尖閣諸島や竹島の両方に対して、日本は強いと思われます。

日本に関していえば、尖閣諸島は日本のほかの領土紛争にとっても、とても重要です。これらを失うことは、日本が外国からの圧力に弱いことを示し、北方領土や竹島を失う可能性が高まるかもしれません。

これは安全保障のテーマでもあります。竹島は中国軍による侵略の前線防衛地点です。日米両軍の武器技術は、未だ限定的な紛争解決のためのものであり、これが弱い根拠です。

日本政府は、尖閣諸島問題を、合気道のように見ています。言い換えれば、尖閣諸島は、間接的に中国政府を不安定にすることに使えるのです。私が最初に指摘したポイントに戻りますが、中国が島を失った場合、軍により支配されている他の多くの領土も失う恐れがあります。

 米国もまた尖閣諸島に関心を持っています。この地域の不安定性は、日米、米韓関係を強めます。このことは、米国が安全保障、貿易、そして経済発展を援助しつつ、この地域にとどまることを意味します。

一般人は、この問題を正しく理解していません。マスメディアは石原都知事のアイデアを、危険でもあるが革新的であるとして、最もフォーカスしています。
私は、国際法の立場からだけでなく、中国が好戦的、支配的、そして対立的になってきているように見えることもあり、日本に心から同情しています。
すべての兆候は、中国が再び世界の中心に返り咲きたいということを示しており、将来中国が大きな問題となることでしょう。この問題は、中国が世界の中心だった時代、中国はもう半分の世界をしらなかったことが問題なのです。さらに重要なことは、中国が世界の中心だったころは規模がすべてでした。

今日、国家は多くの事柄から、そのパワーや影響力が生み出されています。米国が世界の中で支配的な国であるのは、その規模だけではなく、法体系、民主主義、教育、自由、報道の自由、多文化主義、労働倫理、地理などの理由からなのです。



以上です。
短時間でおまとめいただいたこともありますが、このような視点が、外交戦略を考える人々に共通している、と補足いただきました。

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